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琉璃〜Liuli〜、またの名を “ チャイニーズ・パート・ド・ヴェール ”と呼ばれるガラス製法は、台湾 や 中国 といった中華文化圏で強く根付き、今も多くのガラス・アーティストの手により独自の進化を歩む現代クリスタル製法の名称です。

その主な起源を紀元前のメソポタミアに持つガラス形成法 パート・ド・ヴェール(Pate de Verre) とは “ガラスの練り粉” を意味し、ガラス粉を鋳型につめ高温炉で溶融成形する為、その“鋳型”の完成度でガラスの概念を超えた自由な造形が生まれます。

琉璃ガラス製法は、この鋳型の製作に溶かした 蝋(ロウ) を用いることから 『脱蝋鋳造ガラス』 とも称され、その細かく分類された製法工程と造形の複雑さゆえ機械による生産は難しく、50にも及ぶ工程の全てにおいて人の手で形作る必要があります。

このページでは作品製作における工程の一部を通じて、人の手が紡ぎだす “琉璃ガラス” その魅力をお伝えできれば幸いです。

  • 1、 作成するイメージがしっかり固まれば、全体的なデザインを決めるため柔らかい粘土で原型を製作します。
  • 2、 粘土型に筆で少しずつ特殊な膠(ニカワ)を塗ってゆき、型全体に樹脂製の柔軟な膜を形成します。
  • 3、 膜が固まれば切れ目を入れ、粘土型を取り出します。この “膜” が蝋型の 樹脂型(反転型)となります。
  • 4、 樹脂型の周囲を石膏で固めた後、溶けて液状となった蝋を型の全体に丁寧に流しこんでゆきます。
  • 5、 蝋が完全に固まれば樹脂型から蝋型を切り出し、作品細部の造形や装飾を時間を掛け施してゆきます。

思い描くイメージをそのままに、自由に表現する琉璃ガラスの造型は、このワックス・モデル(蝋型)の完成度で決まります。

造型のベースとなる蝋型の完成までには、粘土による原型から樹脂型、そして蝋型の補修と多くの工程と時間が必要です。実は立体型を取るだけであれば最初の粘土型から鋳型を作ることも可能です。しかし、琉璃ガラスはあくまで蝋型鋳造にこだわります。それは粘土では強度が足りず本来の形が歪んでしまう点、そして粘土ゆえの粗い感触がガラスに残ってしまう為なのです。

ツヤのある滑らかな質感、強度を保ちつつ細部まで手を加えることができる点、それが蝋(ロウ)を原型に用いた 『脱蝋鋳造』 の大きな魅力です。しかし後の工程で “溶かす” ための蝋型を製作のベースにする、という選択は “大量生産” の放棄へと繋がります、いかに美しい蝋型が完成しようとも、一つの蝋型からは一つの作品しか生み出すことはできないのです。

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  • 1、 蝋型が完成すれば石膏型の製作に入ります。まず、蝋型の周りを石膏でまんべんなく埋めてゆきます。
  • 2、 固まった石膏に蒸気をあて中の蝋を蒸発させます。※この工程から 脱蝋鋳造(ロスト・ワックス) と呼ばれます。
  • 3、 材料となるクリスタルの素材も、作品ごとにその “質”、“発色”、“サイズ” 全てが厳しくチェックされます。
  • 4、 イメージ通りに色彩を重ね石膏型に埋めてゆき、琉璃ガラスの独特な色彩のグラデーションの基を作ります。
  • 5、 炉の中で850〜1,000℃という温度でガラスを溶融成型した後、ゆっくり時間をかけて炉の温度を下げていきます。

内部の蝋を蒸発させ石膏型が完成すれば “炉” を使ったガラスの溶融過程に入ります。素材となるクリスタルを厳しく選定した後、石膏の空洞部に重なるように配置します。層状となったガラス片がゆっくりと溶けて混ざり合う “溶融焼結” という過程の中で、琉璃ガラスには独特な色彩のグラデーションが生み出されてゆきます。

このガラスの溶融焼結において、急激な温度変化はそのまま作品の破損へとつながります。1,000℃ にも及ぶ炉内の温度を下げるには丁寧に時間を掛けて温度の調整を行ってゆく必要があります。その期間は通常の作品でも2〜4週間、作品によっては 半年 という気の遠くなるような時間をかけて、ただひたすらに炉の温度を下げてゆく作業が必要です。

しかしながら “半年” という時間すらも、炎のいたずらで万一ガラスの結晶化が失敗していれば一瞬で無と帰ります。クリスタルという繊細な素材ゆえ、それら全ての過程の中でたった一つのミスであっても作品として並ぶことは許されないのです。

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  • 1、 ガラスが固まり、炉から石膏型を取り出せば、琉璃ガラスを傷つけないよう石膏を丁寧に切り出してゆきます。
  • 2、 作品の底部をグラインダー(回転刃)で平らに切断します。切断の際に火花が散るため、刃には常に水を流します。
  • 3、 回転研磨台で作品の平らな箇所、鋭い角を研磨します。台の内外で速度が異なるため、繊細な感覚作業を要します。
  • 4、 台では研磨できない曲線部分はベルトグラインダーと呼ばれる研磨機で全体を回転させながら丁寧に研磨します。
  • 5、 細かな凹凸や危険な角がないか、作者自身の手でチェックします。これら一連の過程を何度も繰り返してゆきます。

石膏から切り出された琉璃ガラス、それは言わば魂が宿る前のガラスの容器といえます。どんな宝石もそのままでは輝くことがないように、本物の琉璃ガラスはこの複雑で多岐に及ぶ研磨工程を通さず クリスタル としての輝きを灯すことはありません。

激しく回転する刃のミリ単位での作業工程も当然ながら、ガラス研磨の際に激しく飛び散る火花や、空中を細かく舞うガラス破片など、この研磨作業には常に危険がつきまとっています。しかしながら、何十回と繰り返されるこの研磨工程の過程一つごとに、琉璃ガラスは本来のクリスタルが持つ輝きを少しずつ内に宿してゆくのです。

飛び散る火花、気の遠くなる研磨工程、その風景の中に “クリスタルアート” という言葉が持つ爽やかなイメージはありません。その姿はまるで刀鍛冶が何度も焼き入れを行い、刀身に命を吹き込んでいくかのように 魂 と 情熱 を吹き込む過程なのです。

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  • 1、 全体のカットが終われば、次にマイクロ・グラインダーと言われる研磨機で作品の細かい装飾を彫ってゆきます。
  • 2、 研磨を入れることができない部分や、曲線部の最終的な調整は柔らかなポリッシャーに刃を置き替え研磨します。
  • 3、 目に見えない作品の細かい凹凸部分など、それぞれの過程の間には製作者の手の感覚でチェックを行います。
  • 4、 作品底部などの平らな箇所は、布素材に近いなめらかな回転研磨台で丁寧になめして磨きあげます。
  • 5、 長い工程とすべてのチェックを乗越えた作品の証として、最後に製作者のサインを施せば作品の完成です。

作品の全体的な研磨が終われば、次に入り組んだ部分や細かな装飾といった細かな研磨工程に移ります。ポリッシング(磨く)と呼ばれるこの最終工程では、琉璃ガラスと対話をするかのように、作品の魅力を少しずつ細部に至るまで引き出してゆきます。

マイクロ・グラインダーと呼ばれるペン型の研磨機で丁寧に研磨されるこの作業では、それぞれの作品・工程に合わせて、50近くの異なる細かな刃の中から、大きさや装飾箇所に合わせて刃を変える必要があります。 琉璃ガラス が本物のクリスタルアートとして生まれるためには、作品一つ一つの個性を正確に引き出してゆく、これら細かな神経を使った作業が必要なのです。

全ての工程を妥協することなく完成した作品は、どんなに小さな作品であっても制作者にとって思い入れのある作品です。製作の最後の証として、丁寧にサインを施せば一つの琉璃ガラス作品が誕生した瞬間です。

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琉璃 Liuli ガラス、その作品完成までの工程いかがでしたか。今回ご紹介させて頂いた工程は、あくまでそれぞれの工程における主な部分だけを取り上げさせて頂いた物となるため、実際はそれぞれの工程ごとに 2〜4 もっと多くの工程が含まれています。

琉璃ガラスはそれが例えどんなに小さな作品でも 40 以上の工程、通常サイズの物でも 45〜50 もの工程が人の手で行われます。あなたが手にしてくださった琉璃ガラスの作品にも、それを手にとって喜んで下さる一人一人への製作者の想いが時間を掛け大切に紡がれています、それは紛れもなく他の誰でもない “あなた” への 『 ガラスのメッセージ 』 なのです。

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